推薦教材
推薦教材
まず、イチオシの教材はデイヴ・リミナの教則DVDです。
さすが名門バークリー音楽院のキーボード科助教授だけあって、ひとつひとつのレッスン課題が非常に役に立ちます。
彼が長年教鞭を執る中で至った結論は「どんな演奏レベルにある人でも音楽表現は可能」だそうです。とても励まされますね。
次にお勧めするのは、日本におけるゴスペルの草分け的存在、ラニー・ラッカーさんの教則本です。「日本の礼拝音楽のレベルアップのために」という目的を明確にして書かれた良書です。
ラニーさんは「一度にひとつずつ」がモットーで「演奏技術の習得は、映画のストーリーのようにはいかない。時間をかけてコツコツと練習すること」と語っていますが、本当にその通りだと思います。
エセル・キャフィー・オースティンも良いです。教え方が上手です。
ゴスペルらしいエッセンスが満載で、こういうフレーズや弾き方は、日本人の中から自然には出てこない気がします。やはり、こうして学ぶことで世界が広がります。
突然、ハノンが出てきて「何?」って思われたかもしれませんが、私はこれを日課にしています。
川島 茂というジャズピアニストの言葉を紹介します。
彼は毎日4時間練習するそうですが、まず最初の1時間はハノンを1冊通して弾くそうです。
次の1時間は、彼が自分で作ったフレーズ集を12key全部で弾く。
そして残りの2時間は、曲を本番のステージと同じように弾くのだそうです。
私は毎日1冊弾くことはできませんが、最低でも1章(1~20番)は弾くようにしています。
これは理屈抜きに良いことですので、お勧めします。
リチャード・ティーの教則ビデオからも、教えられたことがいくつもありました。
ひとつは、歌の伴奏では「スペースを作る」ことが大事だということ。
また、後半で「Happy Birthday」を実際にアレンジしてみせるのですが、シンプルな曲を、実に見事にリハーモナイズ(メロディはそのままで、コード進行を変える)してゆきます。
これを見ると、伝統的な讃美歌、聖歌も、いくらでも洗練されたハーモニーをつけることができそうだ、と思うことでしょう。
チック・コリアの教則ビデオで率直に驚いたことは、このような世界的なトップアーティストであっても、練習の仕方は、きわめてオーソドックスなものである、ということです。
冒頭、バッハの曲を練習してみせるのですが、うまく弾けないところを、小分けにしてピックアップし、左右、片手ずつ、テンポを落としてゆっくり弾き、それを両手で合わせて弾き、徐々にテンポを上げてゆく、、、。
当たり前といえば当たり前なのですが、これほどの「天才」であっても、こうした地道な練習の積み重ねの末に、あのような奇跡的な演奏が生み出されてくる、という、そのことがわかっただけでも、このビデオには価値がありました。
山下洋輔という人も、演奏が素晴らしいだけでなく、説明することや教えることに巧みな人だと思います。
もしかすると、大病して演奏活動を中断せざるを得なかった時期が、執筆活動やジャズの理論的な研究につながったのかもしれません。
ドクター・ジョンの教則ビデオでは、なかなか「学び取る」には至りませんでしたが、ニューオリンズのピアノスタイルを知るには役立ちました。
左の10度が頻繁に出てきて、手が大きいなぁ、と思いました。
「おまけ」で弾いているWaltz For Debbyは下記の譜面です。(僕が持っているのは版が古いので表紙の写真が違いますが、、、)
この楽譜はとても良いと思います。
ビル・エヴァンスは(ご存知の方も多いでしょうが)ルートの音を弾かず、ベーシストに自由を与えて、インタープレイの世界を拡げた人なので、ソロピアノでコピー譜を弾いても、何のことか良くわからないことが多いです。
その点、この楽譜は、上手にベースの音を入れてアレンジされているので、ひとりで弾いても楽しめます。
なお、「おまけ」で紹介したビル・エヴァンスの言葉は下記からの引用です。
この本は、ビル・エヴァンスに関する専門的な研究書と言える詳細な内容なので、よほど熱心なファン以外の方には、おもしろい本ではないかもしれませんが、、、。
ビル・エヴァンスという人は非常に内省的な生真面目な性格で、後年、彼はこんな言葉を残しています。
「ジャズで成功したり有名になろうとニューヨークに来た時にいつも『ジャズ・ミュージシャンになって生計をたてられるようになり、それを維持し続けるにはどうすればいいだろうか?』と自問していた。そしてついには、たとえ物置のなかででも、音楽のことだけを大切に考えるしかないという結論に達したんだ。そしてそれがちゃんとできれば、誰かが必ずやって来て、物置の扉を開けて『ああ、君を捜していたんだよ』と、言ってくれるのさ」(同書P.54)